ワンダーファイ 中学入試算数 良問大賞2025

150ヶ国300万人以上のユーザーが使う思考力アプリ「シンクシンク」やSTEAM領域の通信教育「ワンダーボックス」など、子どもの「知的なわくわく」を引き出すアプリやコンテンツを作る会社、ワンダーファイ。

ワンダーファイでは、2020年から毎年、独自に中学入試算数の出題傾向や良問をまとめ「中学入試算数 良問大賞」として発表しています。

2025年の良問大賞では、算数の思考そのものの楽しさを引き出し、中学受験に臨む子どもたちの学習に健全な影響を与える問題のことを、「良問」と呼んでいます。

「中学入試算数 良問大賞」では、このような「良問」を評価することで、中学入試算数の奥深さや楽しさを広め、知的にわくわくする子どもたちがあふれる未来を目指しています。

尚、各校の問題と解答については、こちらの記事をご覧ください。

・対象となる問題はワンダーファイが確認できたものに限定されており、全ての入試問題ではありません。
・本発表はワンダーファイによる独自の選出であり、各学校と一切の関係はなく、金銭的な対価の発生も一切ありません。

ワンダーファイ 中学入試算数 良問大賞2025

縦4マス・横9マスの長方形をルールに従って分割し、その分割方法によってポイントが定義されているのですが、「ポイントができるだけ大きくなる区切り方を回答し、そのポイントが大きい答えほど、高い得点が与えられる」というものです。 

設定の斬新さと、筋の良い試行錯誤をしているかどうかを段階的に評価できる点が優れている問題です。この問題についての詳細は、2025年の総括で後述します。

時間割を決めるという設定が受験生に身近で、題材として親しみやすく、論理の問題としても無理がないという点が優れている問題です。

論理の問題は、算数の力を問う以前に、どんな問題設定かを読み取るのが大変という問題になってしまうことも少なくありません。不自然な文章を長々と読まずとも設定がすぐ頭に入って、楽しく試行錯誤できる問題はとても貴重です。

多人数での出会い(その際にカードをを交換する)をテーマにした問題で、広い括りだと速さに分類されるのでしょうが、いわゆる旅人算のような計算は一切登場しません。少ない人数や具体的な状況で試行錯誤してもらってから、大人数や抽象的な状況に適応できる気持ちのいい発見を用意している栄光らしい問題です。

「道順」の問題において、新傾向の出題形式という点から選出しました。道順の場合の数を求める以下のような解法は中学受験算数では定番の一つであり、良くも悪くも「知っていれば考えずに解けてしまう」問題になりがちです。

ですが、今回選出した問題は、「曲がる時に石を置く」という設定に新しさがあります。パターンとして教わっているやり方を、本当に理解しているのかが問われています。その点で、「場合の数」の理解度を問うのにふさわしい問題になっています。

冷蔵庫のケーキがなくなったというキャッチーな設定と、設問①が絶妙なヒントになっている点が優れている問題です。「ケーキを食べた人は嘘をついていて、食べていない人は本当のことを言っている」というのも頭にすっと入りやすい設定ですね。

②では、①を踏まえて筋の良い推測をすれば、かなり答えが絞られ、複雑すぎず気持ちのいい程度に難度が調整されています。答えの問い方も、勘のみで答えにくいように工夫されています。

問題として見たことがなく、且つ直感的にわかりやすいルールであるという点で選出しました。+と-がくっつき、+同士または-同士は反発しあうという設定も、理科を学んできた子どもたちにとって自然と頭に入りやすいと思います。

目新しい問題ではありますが、こういった問題の登場によって、受験生にとって事前に学んでおかないと不利になるものが増えるということが無いのも優れた点です。楽しく試行錯誤をする経験を積んできたかを試すような問題です。

例年、その年の西暦の数字をテーマにした問題を一定数の学校が出題しますが、2025という数字をテーマにしたものの中でベストな問題を選びました。九九の表を使って、45×45=2025になるということを最もおしゃれに面白く応用した問題だと思います。

1の段を1から9までを足すと45になり、2の段の合計はその2倍になり…というのを9の段まで繰り返して全部足すと2025になります。この理屈がその子の中でストンと落とし込まれていて応用できるかが絶妙に問われています。

問題の中では、例として(6+7+8)×7+(6+7+8)×8=315が挙げられています。

つまり、(連続するいくつかの数の合計)×(連続するいくつかの数の合計)=315となる組み合わせの数を探していくことになります。315を素因数分解すると3×3×5×7なので、ここまでわかれば、煩雑な計算を避けることもできます。

空間認識力を問う問題では、「そんなの頭の中で組み立てるのは無理でしょう」と言いたくなるような複雑な形が出題されることもよくあります。この問題は、問題としての適切な難度を保ちながら、完成形も無理のないかたちになっている、ポップな問題だと思います。

立体の展開図は明確な解法がなく、「頭の中でイメージできるかどうか」が大切です。弊社開発のアプリ教材「究極の立体<展開>」では、黒板や紙ではイメージしづらい展開図の組み上がりをアニメーションやイラストで示すことで、イメージする力を育みます。

どこを軸に回転するかで、ドーナツになったり円柱になったりと様々に変わる立体の問題です。体積を求めるのに必要な3.14を掛ける計算を都度やらなくても済むような、計算負荷を減らす形式をとっているのも特徴的ですし、3.14を伴う計算を、なるべく都度行わずまとめて扱えるようになってきてねというメッセージも魅力的です。
相似比を考えれば、体積の問題でありながら整数問題のパズルのように解ける、おしゃれな問題ですね。

 

会話形式での問題文の誘導が優れた問題です。この誘導の良いところは、限られた試験時間の中で、誘導なしではたどり着けないような算数の面白さにたどり着けるところです。

本問では、⑧〜⑫あたりの箇所が特に秀逸です。一つの問題を様々な解き方で味わうことが、算数や数学や考えることの醍醐味の一つであり、算数や数学を愛する人はほぼ例外なく行っていることだと思います。是非とも受験生にも推奨したいところですが、通常入試問題では、答えを導くことが求められているので、複数の解き方で学ぶことが、受験生にとっては遠回りのように思われがちです。入試で扱いにくい、そんなメッセージを発信している(!?)非常に素敵な問題ですね。

 

2025年中学入試算数総括

2025年の全体の難易度は、開成中学校を筆頭に高度な問題が増えていると言えます。ですが、これは中学受験算数が数十年かけて段々高度化してきた、という意味では例年通りでした。

ワンダーファイでは、中学受験算数の入試問題として「算数の面白さを味わえること」と「翌年以降の受験生の学びに健全な影響を与えること」を重視して今年度の良問大賞を選出しています。これらを満たす問題の一類型として、限られた試験時間の中で無理なく理解度を測ることができるよう問題形式に工夫のある問題が挙げられます。こういった意味での「良問」は、近年増えている傾向にあると感じています。

例えば、今年度の良問大賞に選出したこの問題は、上記の2点を備え、問題形式に工夫のある問題と言えます。

事前知識があるかどうかで、解答時間に差がつきにくい点が優れています。「ポイントが大きい答えほど、高い得点を与える」という形式も、限られた時間内で試行錯誤し、自分なりの工夫を凝らすことを推奨していると言えます。

中学受験算数の入試問題では、学校側にその意図がなくとも、事前にパターン学習で解法の「型」を習得しているかどうかを問うような問題が出題されることもままあります。これは、一部の受験塾が受験生の合格を支援するため、毎年各校の問題を徹底的に分析し、パターン学習に落とし込んだカリキュラムを提供しているという背景があります。本質的な理解がなくても多くの問題に適用できるような解き方を習得することを、受験生が半ば強いられている状況にあると言っても過言ではありません。

そういった状況で、難関校では、未知の課題に対応できる思考力を問う意図からか「見たこともない問題」も織り交ぜて出題する傾向が今年も見られました。しかし結果的に、受験生からすればパターン学習のストックをひたすら増やして対応していくこととなり、「ここまではパターンとして身につけておいた方がよい」という範囲が拡大し続けています。

例えば、開成中学校のこの問題は面白い問題でしたが、次の年以降の受験生にとって「新たなパターン学習のストックのひとつ」として良くも悪くも存在感を持つ可能性があります。

この問題の登場によって、「見たこともない特殊な設定のダイヤグラムを見て状況を推測する問題」が「対策しなければいけないジャンル」に加わってしまうかもしれません。

中学受験算数の入試問題は、小学生がその貴重な時間を費やして向き合うものとして、受験に臨む子どもたちの学びの体験を豊かにするものが望ましいと考えています。日本の中学入試における算数問題は算数の楽しさが凝縮された問題が多く、もはや日本が世界に誇れる「文化」とも呼べるでしょう。試験問題としての要件を満たしながら、且つ算数の面白さを味わえる素晴らしい問題が、これからも多く生み出されていってほしいというのが、筆者の切なる願いです。

以上、ワンダーファイ 中学入試算数良問大賞2025でした。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。ワンダーファイは今後も、子どもたちの知的なわくわくを引き出す様々な活動を行ってまいります。


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川島 慶

代表取締役 COO(チーフクリエイティブオフィサー)ワンダーファイ株式会社
東京大学大学院工学系研究科修了。算数・数学好きが昂じて学生時代よりベストセラー問題集「なぞぺ〜」の問題制作に携わる。2007年より花まる学習会で4歳から大学生までを教える傍ら、公立小学校や国内外児童養護施設の学習支援を多数手掛ける。2014年株式会社花まるラボ創業(現:ワンダーファイ)。 開発した思考力育成アプリ「シンクシンク」は世界150カ国250万ユーザー、「Google Play Awards」など受賞多数。2020年にSTEAM領域の通信教育「ワンダーボックス」を発表。算数オリンピックの問題制作に携わり、2017年より三重県数学的思考力育成アドバイザー。