「つい、やってみたくなる、をどう作る?」学生からのインタビューに弊社クリエイターがお答え(後編)

「幼い子に算数に興味を持ってもらえるようなゲームを作るには?」というテーマで、弊社のクリエイターが中学生からインタビューを受けました。
(インタビューの経緯については前編をご覧ください)

累計ユーザー数300万人を突破した知育アプリ「シンクシンク」や、STEAM教育領域の教材を自宅で学べる通信教育「ワンダーボックス」の開発に携わったクリエイターならではの知見をご紹介いたします。

後編では、教育コンテンツを制作する上での子どもたちとの向き合い方などについて質問をいただきました。


自分でたくさん解いて、子どもたちにも実際に解いてもらって、問題の難易度設計を磨く

学生:問題の難易度はどうやって設定していますか?

秋葉(クリエイター):実際に子どもたちに問題を触ってもらったときのフィードバックを難易度設計に反映しながら問題を作っています。

「できるじゃん!」と4歳の子どもが調子に乗れる入門レベルから、大人も唸る難問まで、難易度が幅広くなるように心がけています。

例えば「どっちとおる?」という問題で、難易度が上がるのってどういう要素だと思いますか。

学生:「ブロックの数が多くなる」等でしょうか。

秋葉:はい、その通りですね!

学生:「穴の形が複雑になる」もでしょうか。

秋葉:はい、そうです!あとは、穴の形が長方形とかだとすごく簡単ですけど、曲がってくると難しくなったりしますね。立方体の数だけでなく、形も結構関係してきます。他には、不正解の選択肢の紛らわしさとかもあると思います。こういった要素を分析していくことが難易度設計に必要になってきます。

学生:難しくなる要素を分析して、それでどんどん増やしていくといった形でしょうか。

秋葉:はい。問題の要素の分析は、問題をとにかくたくさん作って、たくさん解く中で発見していきます。

最初は今までの経験に基づいて問題の難易度設計をしますが、触って動かせるモック(試作品)ができたら、必ず子どもたちに試しにやってもらうようにしています。そうすると、こちらが想定していない意外なところでつまずいたりと、毎回必ず何かしら新しい発見があります。

子どもたちに試してもらうと、難易度を適切に設計する上でとても参考になるほか、操作やデザインについても思わぬ課題点が浮かび上がることも多々あります。

以下は今まで実際にあったつまずきポイントと、その解決策です。


<例1:想定していなかった操作>

十字キーで操作する想定だったが、キャラクターを直接ドラッグしようとしていた
タップしてほしいところをドラッグしようとしていた
→タップすることがわかるようにデザインを工夫したり、ガイドを入れたりといった対応をする。

<例2:表現しているものが正確に伝わらなかった>

2階と1階があるような問題で、2階の色が暗かったため、2階を1階、1階を2階だと誤認識していた。
図形を反転させるボタンがあるような問題で、ボタンを押したときに何が起こったのかが伝わっていなかった。
→伝わらなかった原因を、子どもの様子から推測し、正確に伝わるようなデザインを検討する。

 

「つい、やってみたくなる」をどう作る?コンテンツの入口の作り方で気をつけていること

学生:ゲームを作るときに、気をつけていることは何ですか?

秋葉:子どもがやりたいと思う提示の仕方にこだわることです。「つい、やってみたくなる」状況をどう提示するかということを追求しています。

子どもが「やりたい!」と思う提示の仕方にこだわっています。例えば、穴があったら埋めたくなるとか、何か未完成なものがあったら完成させたくなるとか、バランスが悪いものがあったら支えたくなるとか、そんな感じですね。

まずはやってみて、「こういう問題なんだ!」と気づいてもらって、そこからだんだんとのめり込んでいってもらう、その入口の部分です。

  シンクシンク「アイスドロップ」

それと、子どもの中に残したいメッセージを意識することも大切にしています。例えば「間違えることは怖くないよ」というメッセージ。私たちが開催している授業で、標語として子どもたちによく伝えていることでもあります。間違えることを恐れて手をつけないよりは、どんどん間違えて「こういうことなんだ!」と経験していってもらいたいという思いがあります。

例えば「ビームおしめいろ」という問題があって、「ビームに当たってはいけない」ということを伝える演出について、チームで議論になったことがあります。ビームに当たってキャラクターがとても痛そうな目にあったりすると、子どもたちが「そうなりたくない」「もう嫌だ、そんな姿見たくない」と感じてしまいます。

そうなると、このゲームを遊ぶこと自体に抵抗が出てきてしまいますね。なので、表現はマイルドに、「間違えてもクスッと笑える」感じの表現にすることで、積極的にやってもらえるようにしています。ワニに見つかるとワニが襲ってくるといった迷路もあったのですが、「襲われるのが怖い」という意見があって、ワニが水鉄砲を出すように変えたりもしましたね。

ほかに大切にしているのは、開発者自身がわくわくすることです。面白いから、みんなもやってほしい、みんなに届けたいっていうふうに思えるようなコンテンツを作ることは常に心がけています。

あとは、”配慮”に関してで、世界に届けているので、文化とか宗教とか、歴史とかのところに敬意を持って、どんな文化の子どもも保護者も気分が悪くならないような表現とかっていうのも意識したりしていますね。

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以上、学生の方とのインタビューまとめでした。まとめには入れられていないのですが、学生の方からは「どうして秋葉さんはそんなに算数が好きなのですか?」「算数のこういうところが楽しいですよね」と、算数愛があふれるインタビューでした。

教材作りにおいても、まず作り手がその題材を「好き」であること、教材をやってもらう子にその子の「好き」を見つけてもらうことを、弊社では大切にしています。

ワンダーファイは、今後も「知的なわくわく」を引き出す教材開発をアップデートしていきたいと思います。

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ワンダーファイ

「世界中の子どもが本来持っている知的なわくわくを引き出す」をミッションに、思考力・STEAM領域の教材・知育アプリ・知育書籍などを制作する会社。150ヶ国300万ユーザーを持つ「シンクシンク」、デジタル・アナログを組み合わせたSTEAM通信教材「ワンダーボックス」など。